
訪問理学療法士の「たれめPT」です!前回は、管理職を目指すか・現場に残るかという「キャリアの2つの道」に潜む違和感や葛藤についてお話ししました。
訪問リハビリへ転職し、手取りが増えて生活も少し落ち着いたものの……20代後半の僕の頭には、また新たな疑問が浮かんできました。
それが、「そもそもなんで理学療法士の給料って、どれだけ頑張っても上がりにくいの?」という、業界の根本的な『お金の仕組み』についてです。
若手の頃の僕は、「自分の技術や知識が足りないから給料が上がらないのかな……」なんて真面目に思い悩んでいたのですが、お金や制度の仕組みを調べるうちに衝撃の事実を知りました。
給料が上がらないのは、僕たちの努力不足ではなく「業界の構造(システム)」のせいだったんです……!
今回は、僕が実際に電卓を叩いて絶望(かつ納得)したリアルな裏側と、お金の仕組みについてわかりやすくお話ししますね!
1. 「勉強すれば給料が上がる」という淡い期待の崩壊
理学療法士になって最初の数年、僕は本気でこう思っていました。
「今は20代前半で新卒だから給料が低いけど、休日に勉強会に行って専門スキルを磨けば、きっと評価されてお給料も増えるはず!」
……はい、甘い考えでした(笑)。
第3話でも少しお話ししましたが、どれだけ休日を返上して自腹で研修会に通おうが、どれだけ知識を蓄えようが、1年後に上がる給料は毎月数千円程度(以前勤めていた病院では年1,500円でした)。
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「『あれ……? 今月行ったセミナーの受講料と交通費だけで、年間の昇給分が一瞬で吹き飛んでる……!?』と気づいた時は、一瞬固まってしまいました(笑)」
ここで僕は、「理学療法士(医療・介護業界)のお金の仕組みって、一体どうなっているんだろう?」と真剣に調べ始めることにしたんです。
2. 理学療法士の給料が決まる「診療報酬・介護報酬」という天井
なぜ、どれだけ個人で努力してもお給料が大幅に上がりづらいのか。 その最大の理由は、僕たちが提供するリハビリの「価格」が自由競争ではなく、国が決めた「診療報酬・介護報酬」という公的なルールで一律に決められているからです。
わかりやすく「病院」と「訪問」に分けて整理してみますね!
◆ 病院勤務の場合:1日24単位の壁と「売上の天井」
病院のリハビリは、1単位(20分)あたりの単価が国によって一律で決められています 。 さらに、「もっと頑張って患者さんを診たい!」と思っても、セラピスト1人が提供できる単位数には国が定めた厳格なルールが存在します 。
分かりやすく表にまとめてみますね!
【病院リハビリの「単位数ルール」一覧】
| 項目 | 国で定められたルール |
| 1単位の時間 | 20分 |
| 1日の上限単位数 | 原則18単位(特定で最大24単位まで) |
| 1週間の上限単位数 | 最大108単位まで |
| 1単位の単価 | 経験やスキルに関わらず一律(同じ価格) |

「新卒の頃の僕は『休日返上で勉強してスキルを上げれば、患者さんをもっとたくさん診られて、お給料も上がるはず!』と本気で信じていました(笑) 。
ですが、制度上、1人に提供できる単位数の『限界』があらかじめカチッと決まっていたんです……!」
つまり、新卒1年目のPTが提供する1単位も、経験15年のベテランPTが提供する1単位も、国から病院に支払われる金額は「まったく同じ」なんです。
どれだけ素晴らしい臨床技術で患者さんを感動させても、病院に入るお金の上限が決まっている以上、個人の頑張りだけでお給料を2倍、3倍にすることはシステム上不可能です。
◆ 訪問リハビリの場合:売上を計算してみたら……
「じゃあ、訪問リハビリはどうなの?」と思いますよね。 訪問リハビリも同様に、1回あたりの報酬(単位数)が決まっています。
気になった僕は、自分の1ヶ月の売上を電卓で計算してみることにしました。 (※ちなみにこの時、はりきって計算し始めたものの、途中で電卓の『C(クリア)』キーを押し間違えて計算結果が一瞬で消えてしまい、3回くらい計算し直したのは内緒です……照)
仮に1件の訪問で事業所に入る介護報酬を約8,000円〜9,000円とします。 1日に7〜8件回ったとして、1日の売上は約6万円前後。 1ヶ月(20日稼働)で事業所に入ってくる売上は、およそ120万円〜140万円ほどになります。

「お!1カ月で130万円も売り上げているなら、もっとお給料をくれてもいいんじゃない!?」
……を一瞬思ったのですが、現実はそう甘くありませんでした(笑)。
ここから、事務所の家賃、訪問車の維持費・ガソリン代、事務スタッフさんの給与、事業所としての利益やリスクへの備えなどが引かれていきます。 これらを差し引いてセラピスト個人に還元できる人件費の上限を計算すると……どうしても限界(天井)が見えてしまうのです。
訪問で「1日20件回る!」なんてことは物理的に不可能ですし、仮に体力の限界を超えて無理をしたら、自分の身体や腰が壊れて終了してしまいます(第4話の体力の壁ですね!)。
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「あ、これプレイヤーとしてどれだけ神レベルの技術を身につけても、物理的にお給料の天井が決まってるんだ……」
この現実を数字で突きつけられた時、僕はショックで思わずため息が出てしまいました。
3. 「僕の努力不足」ではなく「仕組み」だと知った安心感と気づき
一見すると絶望的な事実に思えますが、この仕組みを正しく理解したことで、僕はひとつ大きな「心の救い」を得ることができました。
それは、「お給料が上がらないのは、自分の臨床技術や努力が足りないせいじゃない」と分かったことです。
真面目なセラピストほど、「もっと勉強しなきゃ」「自分が未熟だからお給料が増えないんだ」と自分を責めてしまいがちです。 ですが、原因は個人の努力不足ではなく、「1人が生み出せる売上に物理的な天井があるルール(仕組み)」そのものにありました。
「ゲームのルール自体がそういう仕組みなんだ!」とスッキリ納得できたことで、自分に対する無駄な劣等感や焦りはスッと消えていったんです。
「自分のせいじゃないと分かったら、変に自分を責めずに、これからどう立ち回るかを前向きに考えられるようになった!」
まとめ:「ルール」を知った上で、僕たちはどう立ち回るか?
今回は、理学療法士の給料が上がりにくい構造的な理由(診療報酬・介護報酬の仕組みと売上の天井)についてお話ししました。
- 理学療法士のサービス単価は「国」が一律で決めている
- 1日に提供できる単位数(件数)には物理的な上限がある
- どれだけ臨床技術を高めても、1人が生み出せる売上(天井)は決まっている
この業界の構造自体を、僕たち個人の力で変えることはできません。
「じゃあ、この構造を知った上で、20代後半の僕たちセラピストはどう生きていけばいいんだろう?」
仕組みを知ってスッキリした反面、本業1本だけに頼るリスクを感じた僕は、ここから「本業以外の軸」を持つための模索を始めることになります。
次回(第9話)は、「ネットでよく見るPTの平均年収430万円」という数字の罠と、僕が実際に転職を決意したリアルなお話をお届けします!
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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